思い出の堀田温泉
 私は竹の学校の間、別府に一年半程住みましたがその時にお世話になたのが堀田温泉です。宮崎の工房で修行をしている時に竹の学校を受験したわけですが、合格していざ引越しとなるとやることがいっぱいあり、なかなか大変でした。当然別府でまずアパート探しとなる訳で、不動産屋を何件かのぞき物件探しをしました。すでにかなりの木工道具を持っていたので、住むところの条件は部屋が二つありトイレが水洗だったらいいな、とこれぐらいしか考えていませんでした。つまり風呂は小さいものかシャワー位付いていると思っていたのです。ところが別府のアパートには風呂無しがとても多いのです。不動産屋さん曰く、別府はどこでにでも温泉があるから風呂は要らないし、一戸建ての家でも自分の家の風呂よりむしろ近所の温泉に行くぐらいだというのです。それはそれで「土地柄なんだなぁ」などと思い、とりあえず近所の温泉に案内してもらいました。

 そして行ってみると、なんだか古い建物でイメージの温泉とは違う印象でした。中に入るともっと驚いたのが地面より一段低く四畳ほどの浴槽があり、すべてモルタル打ちっぱなしの状態で、シャワーや銭湯のような並んだ蛇口も無く、その雰囲気は半露天風呂といったたたずまいでした。良く言えば趣のある、逆に言うと猿が入っていても絵になるなという感じです。

 だが、いざ住んで慣れてしまうとこれがすこぶる良いのです。たまに回ってくる温泉掃除をすればタダで入れる事は勿論、豊富な湯量のため常に浴槽から湯が溢れ、24時間いつでも温泉に入れます。竹を夜中まで編んだ時には、硬くこった体をほぐしに良くつかりに行きました。湯船のお湯で存分に体を流すため水道は必要無く、したがって蛇口はいらないという事に後から気付きました。

 しかしこの温泉も現在は建物の老朽化や、観光促進などの観点から地域住民に惜しまれつつ廃止されてしまいました。妻の病院の待ち時間を利用して、取り壊される前にカメラに収めようと思い訪れました。残念ながら鍵が掛かっていたために中の様子は撮影できませんでしたが、ここに数点の写真を残しておきたいと思います。
今はもう入れない、昔の堀田温泉。一見寒そうだがお湯が常に溢れているので、冬でも以外に暖かかったものです。
左は告知の看板。現在でも地域住民は裁判等で争っています。

右は新しい堀田温泉。昔のものは基本的に地域の人々しか入ることができなかったのに対し、これからは観光客も自由に入ることができます。(有料)

(2004.10)



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